東京へ行く機会あらば、是非やりたいことの一つに『ギターを買う』と言うのがあった。ギターくらい大阪でも買えるやん〜、とか言われそうやけど、これがなかなか売ってない。
僕の欲しいギターはボサノバで使うガットギターで、楽器マーケットの中で言うとギターの中でもメインのエレキギターではなくてアコースティックギター、さらにそのコーナーの中でも2割ほどのスペースしかない小さなマーケットなのだ。なので大阪の大型の楽器屋さんなんかでもガットギターは20本程置いてる店がいくつかある程度なんです。で、値段もお手頃なものから100万越えまで様々あるので僕の欲しいギターに出会えるのは本当にお店一軒に二、三本あればいい方。そしてよしんばそれがあったとしても、果たして本当にこのギターを今買うべきなのか、選択肢が少なすぎて判断できない。と言うことなのだ。ん?誰が根性がなしだとぉ?
何故なら、ガットギターはなかなかにお高い買い物だから失敗は許されないのだっ。
と言うことで噂に聞いていた楽器屋の町、御茶ノ水へ行って来たよ。
まず、駅を降りて驚いた。駅前の交差点、既に楽器屋だらけ。角を曲がっても、坂を下りても楽器屋。二階も三階も楽器屋。なんじゃここは。日本広しといえどもこんな街、ここしかないんじゃなかろうか!ミュージシャンには嬉しすぎる街じゃぁ〜!
相手にとって不足なし、と言うことで早速ガットギター専門の店を探してみる。エレキギター専門、バイオリン専門、管楽器専門、ドラム専門、ピアノ専門…。ないぞ、ガットギター専門。全然見当たらない!仕方なく楽器屋のお兄さんに聞いてみたら5分ほど歩いた先に一軒あるそうな。五分も歩いてもまだ楽器屋が続くとは…御茶ノ水恐るべし!そして、言われた通り歩いて行くと、ありました!ドラム屋さんの三階!
ここしかないのに、それでも三階。ガットギターってとことんマイナーなのね…。w
お店に入るとそこには所狭しとガットギターがズラリ。見れば噂に聞く安い一枚板のガットギターHOLAのギターや、その他、安いガットギターもかなりの数置いてる。ざっと100本以上はあると見た!そう、ここだ!こう言うところでギターを選びたかったのだ。自分に合う、自分の中で本当に納得のいく買い物がしたい。そのために値段の上限はつけない覚悟。たとえ100万でも買うぜ、納得さえできれば。
すいませーん、と言うと奥からふかわりょう似の店員さんが( 推定40歳 )出て来た。ボサノバをやっていることや今までろくなギターを弾いてこなかったことを伝えると、次から次にギターをチューニングして弾かせてくれた。2時間ほど色々試させてもらっただろうか?
最初は安いやつから、少しずつ値段の張るものへと。安いからダメだ、てなわけではなかった。高いからすごい、てなわけでもなかった。パッと手にしてどうですか、と聞かれたら安いギターで納得して買ってたかもしれない。でも俺はこの機会にいろんなギターを試したかったのだ。なぜ三万と100万のギターがあるのかと。純粋に興味があった。三万のギターも一枚板で作られてたり、スペイン産( ガットギターの本場
)のもので安いのもある。古けりゃ高い、そんなわけでもないだろうし、いったいどんな違いがあるのか!?みなさんも興味が湧くところだろう。
たくさん弾いてわかったことがある。そのガットギターの専門店には変な楽器は置いてない。それなりに置くにふさわしい実力を持ったギターしかそこにない。当たり前だよね。それでも三万くらいのからあるのだ。ちなみにその安ギターは驚くほどの実力を秘めていて単板でチューニングもよく、しっかりと鳴る。でも、それだけなのだ。たとえたら安ワイン。甘い、フルーティ。爽やか。そんな感じかな。むしろ、俳優に例えたほうがええかな。
例え直したら安いギターは俳優の養成所を出たての若い俳優。無名だがきっちり教育されている。一通りの普通の演技や発声はできる。だがしかし、そこに深い人間性や物語はない。つまり、演技の向こう側に何も感じさせてはくれないのだ。顔が綺麗、声も出てる、演技も一応出来る、でも面白くない。そんな感じだ。
いざ強く激しく弾くとすぐ、変な声( 音 )を出す。若い俳優なんかもあるよね、ココイチのシーンで声が裏返ったり、臭かったり。
一方、中古でも十万を超えてくるとそれぞれのギターにしっかりと個性が出てくる。一つずつの音は魅力的に響き、場合によっては声がかすれたりアクションができなかったり、チューニングもとままならなかっとり弱点すら持ってたりするのだが、ちゃんとキャラクターを持ってる。つまり、俳優で言うところの俳優としてキャラクターが出てきているのだ。もちろん、俳優によって伝わってくるフィーリングは様々。ギターの場合はそのキャラクターは倍音がどこで鳴っているかと言うのがキャラクターになる。そして、不思議なほど、良いギターを試すと、しばらく弾き込んでしまう。会話が始まるのだ。いや、むしろ、そのギターが話し出す、と言う感じかもしれないが不思議なほどいろんなフレーズを弾いてしまうのだ。
そしてどんどん値段を上げていくとその傾向は顕著になっていく。まるで大物( おじいちゃん )ハリウッドスターのようにギター自体にキャラクターが強烈にあってその俳優が出るだけでもう映画もある程度色が決まってしまう。
それくらい強烈だった。良くも悪くも。音を出すと急に50年代のような古めかしい味が出たり、音が重なり合って雑に響きあって焦げ付いたような雰囲気を醸し出したり。そのギターによって、本当に味が濃いのだ。下手をしたらそのギターのキャラクターにこちらが引っ張られてしまう。そんな印象すら感じた。
そして僕は気に入ったギターを並べ、繰り返し音を出し、聴き比べ続けた。そして、途中からは歌いながら弾いてみた。そしたらついにギターと声のマッチ感が1番良かったギターが見つかったのだ。このギターは歌を邪魔せず少し声より低い音域で響いて優しく一歩下がって鳴ってくれる、そんなギターだ。ホセ・ラミレスと言うガットギターのメーカーとしては一流のブランドだのこと。
長らくギター選びに付き合ってくれたふかわりょうさん、ほんまにありがとうございました。おいら、こいつと幸せになります!
と言うことで、ギターの値段とその価値ついて色々調べて僕はそこまで高額ではないキャラクターが出始めのいい味の控えめなギターを購入しました。芸歴もキャラクターもまだ、俺と同じでこれからさらに味が出そうなこいつ。こいつとボサノバや生ギターでのライブ、これからやっていこうと思います!
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